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サルマン・ルシュディの文学
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20世紀、もっとも優れた作家のひとりであるサルマン・ルシュディ(あるいはラシュディの名で知られているだろう)は、1989年、代表作『悪魔の詩』がモハメットを侮辱しているとして、ファトワの宣告を受けて以降、暗殺の危機にさらされ、イギリス政府の保護下で幽閉生活を余儀なくされている。日本でも、翻訳者が暗殺される事件があり、本来であればすべての作品が翻訳されていてもおかしくない作家であるにもかかわらず、『悪魔の詩』以前に訳された作品のほかには、わずかに児童書と短編集、紀行文『ジャガーの微笑み』が上梓されたのみである。本書は、1998年の事実上のファトワ解除以降、アメリカを中心として急速に厚みを増した研究の成果を踏まえ、この大作家を未訳のものも含めほとんどすべての作品に即して評価し、ガルシア=マルケス、ボルヘスなど、魔術的リアリズム作家とのつながりも論じ、「複合自我」と多元主義的セキュラリズムという特異なテーマを導き出す。日本では初となる本格的研究書である。
付録として、彼の創作活動と密接なつながりをもつその半生を記した小伝の一章を設けた。
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