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人文書院

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イコノロジーの創始者として美術史学の始まりを告げたヴァールブルクだが、学そのものの基盤を内破させかねない独特の時間=歴史モデルゆえ、不当にもパノフスキーやゴンブリッチなどの次世代により闇に葬り去られた。しかし現在、カルチュラル・スタディーズや視覚文化論など隣接諸学の侵食により学の基盤そのものの危機が強く意識されるにつれ、悪魔祓いされた美術史の祖が再び召喚されている。ベンヤミンに通じるアナクロニズムの歴史観に大きな可能性を見るこの再評価の動きは、さながらヴァールブルク・ルネサンスの活況をていしているが、思想史家の俊英(邦訳に『ヴィーナスを開く』白水社など)による本書は、なかでも最良の成果である。大文字の思想家(タイラー、ブルクハルト、ニーチェ、カッシーラー、ビンスワンガー、フロイト……)との対比のなかで、ヴァールブルクが、そして新しい歴史学が浮彫にされる。美術史のみならず、歴史学、思想史など人文諸学の基本文献。


パトスの知、ニーチェ的な「悦ばしき知」の力強いマニフェストである本書の中で、美術史はイメージの時間へと開かれ、その名を忘れ去っていく。それは美術史が廃墟となって「幽霊たちの時間」へと入り込む過程とでも呼べばよいだろうか。ジャックデリダはかつて廃墟の愛をめぐって、われわれが制度を愛することができるのは、そのもろさを通して、つまり、「その廃墟に宿る幽霊またはその廃墟から浮き出すシルエットを透かして見ることによって」であると語っていた。そして、「それの廃墟とはつまり、私の廃墟である」がゆえに「われわれは、幽霊や廃墟を避けて通ることはできない」。すなわち、私がすでに幽霊であるがゆえの、自画像としての廃墟への愛。幽霊ヴァールブルクのために書かれたこの大著の底に流れるのは、美術史の廃墟――その名の廃墟――へと向けられた、そんな愛であるように思われる。
(田中純「解説 美術史を開く」より)

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