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人文書院
医学と儒学
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近世日本の医家は、なぜ「復古」を唱えたのか
『論語』『孟子』『周礼』などの儒教経典、伊藤仁斎や荻生徂徠の儒学、麻疹・痘瘡・腸チフスなどの疫病、東アジアの国際情勢から様々な影響を受け、絶えず変容し続けていた近世日本の医学。古方派医学の「四大家」後藤艮山・香川修庵・山脇東洋・吉益東洞が実践した「復古」の多様性を解き明かし、彼らを近代医学的評価から解放する、近世日本医学史を再定位する意欲作。
儒学思想に気を配りながら、古方派医家らの思想の展開を分析していく作業は、これまでの医学史研究が決して得意としてこなかった領域といえる。……その理由はかつての近世日本医学史研究が、何より医学の近代化過程に関心を集中させ、近代西洋医学を軸にして当時の医家を検討してきたことが原因である。その過程では近代化に寄与したとみられる医家やその思想に関心が集まる一方で、前近代的とみなされた儒学との関係などには、あまり関心が払われてこなかった。本書が焦点を当てる古方派は、とりわけこうした評価軸から取り上げられることが多かった医家である。吉益東洞が代表的なように、彼らの「近代的」とされた側面がクローズアップされる一方、彼らの基盤ともいうべき「復古」主義については、十分検証されない状況が長く続いていた。とはいえ、今日の視点から一見「近代的」にみえる側面が彼らにあるとしても(あるいは、それが仮に後世的評価としてある程度妥当であるとしても)、彼らは自覚的に「近代化」への道を歩んだわけではない。あくまで彼らを突き動かしたのは、それぞれが正しいと考えた「復古」主義であった。(本書より)
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