人文書院
「大東亜」を建設する
「大東亜」を建設する
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エンジニアたちの「大東亜」
戦時下において「技術」に希望を託し、合理的な統治と動員体制を築こうとした革新官僚と技術者たちがいた。帝国日本にとって「技術」とは何だったのか。「大東亜」建設の実相に、新たな視角から迫る力作。
アジア・太平洋戦争期、帝国日本の戦時動員のため「技術」という言葉が広範に使用されていた。それは単に科学技術だけではなく、社会全体の統治にもかかわるイデオロギーであった。狂信的な言説が吹き荒れたと思われる時代は、実は科学的・技術的な言説が力を持った時代でもあったのだ。本書では、革新官僚と技術者たちの動向を中心に、満州と中国における巨大建設プロジェクトを詳細に分析しつつ、戦後までをも貫く「技術」言説を思想史的に描き出す。新たな視角から帝国日本の核心に迫る、急逝した気鋭のアメリカ人研究者の遺作となった画期的研究。
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訳者略歴と担当章
三原芳秋(みはら よしあき)1974年生まれ。コーネル大学大学院人文科学研究科博士課程修了。文学博士(Ph.D.)。英文学・文学理論。現在、一橋大学大学院言語社会研究科教授。編訳書にゴウリ・ヴィシュワナータン著『異議申し立てとしての宗教』(みすず書房、2018)。論文に"Vico or Spinoza: An Other Way of Looking at Theory, circa 1983". Ex-position,Vol.40 (2018) など。(序章)
金山浩司(かなやま こうじ)1979年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科修了。博士(学術)。現在、九州大学基幹教育院准教授。科学史。『神なき国の科学思想 ソヴィエト連邦における物理学哲学論争』(東海大学出版部、2018)。(一・二章)
栢木清吾(かやのき せいご)1979年生まれ。神戸大学大学院総合人間科学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。移民史。現在、広島工業大学ほか非常勤講師。論文に「移民史と海事史を越境する」(塩原・稲津編『社会的分断を越境する』青弓社、2017)、訳書に『よい移民 現代イギリスを生きる21人の物語』(創元社、2019)など。(三章)
山品晟互(やましな せいご)1995年生まれ。神戸大学国際文化学部卒業。現在バルセロナ大学大学院(科学史)に所属。論文に「軍事産業としての日産 戦前・戦後の連続性」(塚原・愼編『軍事研究の歴史における戦前・戦後の技術の連続性を考える』神戸STS叢書、2017)など。(四章)
小野萌海(おの もえみ)1998 年生まれ。神戸大学国際文化学部在学。ポーランド・クラクフのヤゲウォ大学に留学。製鉄史。論文に「軍事研究についての近年の動向の調査」(塚原・愼編『軍事研究の歴史における戦前・戦後の技術の連続性を考える』神戸 STS 叢書、2017)。(四章)
井上雅俊(いのうえ まさとし)1993年生まれ。神戸大学国際文化学部卒業。フランス・パリの社会科学高等研究院(EHESS)修士課程・科学技術社会史専攻を修了。論文に「原子力性からみる核の現代史」(『ものがつなぐ世界史』ミネルヴァ書房、近刊)など。(五章)
内川隆文(うちかわ たかふみ)1987年うまれ。東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程在学中。電力業史・革新官僚論。(終章)
辛島理人(からしま まさと)1975年生まれ。オーストラリア国立大学太平洋アジア研究学院博士課程修了。Ph.D.取得。経済史。現在、神戸大学大学院国際文化学研究科准教授。『帝国日本のアジア研究 総力戦体制・経済リアリズム・民主社会主義』(明石書店、2015)。(終章)
藤原辰史(ふじはら たつし)/1976年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科中途退学。現在、京都大学人文科学研究所准教授。『分解の哲学』(青土社、2019)、『トラクターの世界史』(中公新書、2017)ほか多数。(解説)
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