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人文書院
晩禱
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著者の書斎の机上に、もう何年もリルケの『時禱詩集』が置かれている。その傍らには『マルテの手記』と『ドゥイノの悲歌』も。
みずから孤独をもとめ新たな言語表現に格闘しヨーロッパ精神のひとつの典型を打ち建てた百年前の詩人への、いまもたえず湧きおこる熱い思い。
本を読むことはまさしく生きること、自分との対決である──リルケをくりかえし読むことで「一種名状しがたい生の確信」、「修道僧の祈りの内にひそむ創造の秘密」が明かされるという。光と闇、見えるものと見えないもの、はかない人間存在が人生からゆだねられる使命(委託)とは何か?
「いま私は時を求めて垂直に内面にむかって旅したいと思う。迷いつつ出発をおくらせていたその時がいま訪れたこの巡礼の旅ではないか。この時の中に生きる自分、日常のもろもろの衣服を脱ぎすて、雑然とした概念を打ち捨てようやく最後の旅が、今この時なのではないか。その旅というのは、成熟した物や事として現前するものを私が全存在をかけて受けとめることではないか。それは委託を受けるということなのではないだろうか。」
(本書より)
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