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人文書院
果てしない余生
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墓誌からよみがえる宮女の軌跡と後宮の物語
北魏では子が皇太子となると、その生母が死を賜る「子貴母死」の制があり、後宮の権力争いの火種となるだけでなく、王朝全体を揺るがす政変へと繋がっていた。この激動の時代を生き抜いた一人の宮女の生涯を正史と墓誌を縦横に駆使し鮮やかに描く。
平城皇宮の一宮女となる前、王鍾児〔慈慶〕は南朝劉宋の中下層官僚の家庭に育ち、同じような階層の夫の家に嫁いだが、後に南北朝の戦争により、北方に拉致され、奚官の、卑賤の身で虫けらのような奴婢となり、平城に送られて宮女となった。王鍾児が三〇歳になったこのとき、彼女にとっては、人生で天を驚かせるほどの大事が発生し、正常な生命の軌跡はにわかに停止し、残ったのは暗く寄る辺のない余生であった。彼女が北魏皇宮で五六年も生活することを誰が予想できたであろうか。まさしく果てしない余生である。
(「緒言——慈慶の死」より)
原書:罗新『漫长的余生:一个北魏宫女和她的时代』北京日報出版社、2022年
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